株式会社 いしい旋盤製作所登録番号:0125

石井貴幸 社長

 今回のピックアップ企業では、エンジニアリングプラスチックの複合旋盤加工・切削加工を得意とする株式会社いしい旋盤製作所の代表取締役、石井貴幸さんにお話を伺った。

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 石井社長は金属加工業を営む旋盤工の父親のもとで幼いころから旋盤機械に触れ、機械操作の基本を習得。39歳で、すでに旋盤歴25年以上のキャリアを持つ。工業高校卒業後、父親とは違う分野で勝負したいと考え、フッ素樹脂を専門に加工する会社に勤務。難易度の高いベローズ(蛇腹)やダイヤフロムなどの半導体機械部品製作に挑み、職人として技術力の向上に努めてきた。
 当時から、高齢化するものづくり職人から若い世代に技術の継承ができていないことや区内の町工場の減少、日本全体のものづくり産業の衰退を危惧していた石井社長。職人の廃業が相次ぐ中、複数の取引先から独立を促され、平成23年2月から独立の検討を開始。直後に東日本大震災が発生し、創業には厳しい環境だったが、石井社長の決意は固く、8月に個人事業主として開業。石井社長は当時のことを「道すら用意されてない中でのスタートだった」と振り返る。製造業は設備の初期投資に数千万円を要するため、起業のハードルが高い業種といえる。近年では製造業での起業は影を潜め、当社の手本となる事例はなかった。石井社長は「後進にとってのモデルケースになれれば」との思いを持ち、既存の概念にとらわれず、時代に合った自由な発想で事業を行っている0125_pickup_02.JPG

旋盤の職人技が光るベローズ(蛇腹)加工 →


 取引先は半導体、食品加工、医療など多岐にわたり、特定の業種に偏っていない点が当社の特徴である。特定の業種に集中させないことで、リスク分散を図っている。また、難易度の高い試作品はもちろんのこと、一般的に引き受け手が少ない小ロット・短納期にも応じる。石井社長、営業を担当する塚本美千代取締役、従業員2名の計4名と最低限の人員ながら、こういった対応ができるのは「各分野のエキスパートがそろった文字通り少数精鋭の組織だから」と石井社長は語る。
 創業当時2社だったが取引先は、今では160社にまで増加。営業は石井社長が全幅の信頼を寄せる塚本取締役が担当している。女性が、男性中心の製造業で営業活動を行っていくには、いくつもの困難や苦労があったことは想像に難くない。塚本取締役は熱意を持って誠心誠意、取引先の担当者に接し、意向をくみ取り、男性にも負けない努力と女性ならではの細やかな対応により、信頼を獲得。結果として短期間での取引先の拡大につながった。
 石井社長は、日本のものづくり技術の海外への流出を食い止めるべく、自らが次世代製造業をリードし、次世代に向けて橋渡しをしていくことを使命ととらえ、情熱と熱意を信条に日々活動している。若手技術者育成のため、地元工業高校研修生の受入指導にも積極的だ。また、塚本取締役の発案で、当業者や地域住民に対し、当社の近況や加工技術などを紹介することを目的に「いしい旋盤製作所新聞」を毎月発行。ものづくりの素晴らしさや奥深さなどに興味を持ってもらうための広報活動にも力を入れている。
 平成26年6月には石井社長の技術力が高く評価され、区内で活躍する次代のものづくりを担う技術者を表彰する制度「大田区の工匠 Next Generation」で表彰された。将来を担う模範となる技術者の石井社長が率いる いしい旋盤製作所は大田ブランドの掲げる「Only Ota Quality」を実践している企業の1つであることは間違いない。今後のますますの飛躍が期待される。