株式会社 西村製作所登録番号:0076

西田昇社長

 今回のピックアップ企業は、株式会社西村製作所の代表取締役、西田昇さんに話を伺った。同社は昭和23年に創業、精密プレス加工を得意とし、当時からカメラのレンズ内で明るさの調整をする絞り羽根の製作を手掛ける。多い時期にはシェアの半数以上を占めていたといい、またプレスで使用するミクロン単位の金型の設計・製造も自社で行っている。

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 西田社長が入社した頃の西村製作所を表すエピソードがある。「大手企業の資材担当が大量に図面をもってくるんだ。その中で西村が何枚か仕事を選び、資材担当が持ち帰って西村製作所に4枚お願いすることができたと上司に報告すると、『あの西村に4枚もお願いすることができたのか』」と言われる。それぐらい、当時の西村製作所はエラかった。仕事がたくさんあったから、営業が仕事をとってきても、「面白くない」「儲からない」という理由で職人達はやりたがらない。仕方なく協力会社に仕事をお願いすることが続き、西田社長はこうして技術力が低下していく状況に危機感を持つようになったという。
 西田社長が常務だった2008年、工場長が定年で退職することになり、いよいよ西村製作所は窮地に立たされる。不安の募った西田さんは付き合いのあった同業の社長の元に行き、このままでは金型が作れなくなってしまうと持ちかけた。すると「西田くん、製造業なんだから絶対金型は造らなければダメだ。なんとしても造りなさい。」と激励され、それから何としても生き残らなければならない、と強い気持ちで改革を決意する。

自社開発したサーボプレス機。0.05mmの穴開けに対応する

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 優秀な技術者の確保のため、西田社長が白羽の矢を立てたのが、なんとこの相談を持ちかけた社長の息子さんであり、現在技術部長を務める藤倉さんだった。当時別の工場で働いていた藤倉さんに、西村製作所の状況、中小企業の将来を幾度となく語り、5年かけて口説き落としたという。藤倉さんは今、金型の設計等の生産技術の管理を担う傍ら、若手社員への技術指導も行っている。最近では独自でサーボプレス機を組み上げ、0.05mmの超微細な穴あけを実現、平成24年には中小企業新技術・新製品コンクール入賞の立役者になった。西田社長も「藤倉なくして西村は成り立たない」と言わしめるほど信頼は厚い。
 他方、消防署からの通知でさえも封を切らずに捨てていたという閉鎖的だった社内体質にもメスが入り始めた。西田氏の義兄にあたる高橋総務部長のもと、多方面で積極的なPR活動を展開し、平成20年には大田ブランドを取得、また大田区「優工場」に認定され、平成25年には2度目の挑戦で見事「優工場」総合部門賞に輝いた。今では地域の活動にも積極的に取り組み、消防署などからも表彰されるほど、社内の管理体制は見違えた。
 藤倉さんと高橋さんを両輪に例えると、西田社長がまさにエンジンだ。今、西田社長が推進しているこうした活動を、同氏は包括して「悪あがき」と呼んでいる。「あれとこれ、どちらを先にやるかではなく、とにかく今できることは何でもやる。それが売上に直結しなくても、とにかく動かないと何も生まれない」。日本はもって100年、だから中小企業では50年だと、入社時に抱いていた悲観した未来を変えようと、西田社長は今、生き残りのためにできることを全力で取り組んでいる。
 技術の探求心を取り戻し、また使える手は全て使って発信しようと、必死に「悪あがき」をする西村製作所は中小企業のお手本のような存在であり、大田ブランドの掲げる「Only Ota Quality」を体現する企業であることは間違いない。今後ますますの活躍が期待される企業である。