大洋ツール 株式会社登録番号:0119

?萩敦之常務(左)と?萩俊夫社長(右)

 今回のピックアップ企業では、物づくりの原点である切削工具の専門メーカーとして半世紀以上、日本の製造業を支えてきた大洋ツール株式会社の3代目社長の高萩俊夫さんと常務の高萩敦之さんに話をうかがった。

←高萩敦之常務(左)と高萩俊夫社長(右)


 創業者は俊夫社長の伯父。創業時はミシン用工具を製作していたが、その後、一般ハイス工具の製造に事業転換。ハイスとは、高温下での耐軟化性の低さを補い、より高速での金属材料の切削を可能にする工具の材料として開発された鋼で、高速度鋼「High Speed Steel」のことである。「High Speed Steel」の各単語の頭文字「HSS」をとり、ハイスと呼ばれている。
 同社では、主にハイスを用い、リーマー、カッター、エンドミルなど切削工具を受注生産している。同業他社と比べ、短納期・小ロットで対応し、日本メーカーの原材料を採用することで高品質・高精度な製品を製造している。製品の評価指標の一つ、寿命の長さは熱処理の技術に大きく左右される。熱処理工程を担当する株式会社上島熱処理工業所は、大田ブランド登録企業であり、現代の名工や特級金属熱処理技能士を有する金属熱処理のプロ集団で、熱処理分野で非常に高い評価を得ている。この熱処理技術が、製品の長寿命を支えている。
 後継者として入社した俊夫社長は入社2年目で工場長に就任し、古参の社員との関係で苦労した経験から、平成7年に社長に就任後、社員を第一に考え、「人の和」を大切に経営にあたってきた。日ごろユーザーの声を直接耳にすることのない社員のモチベーションを向上させるため、平成15年に大田区優工場への応募し認定を受け、平成18年からは国際工作機械見本市「JIMTOF」への出展を続け、社外から評価を受ける機会を設けた。また、工場見学の受け入れも社員教育の場として活用している。見学者への説明はプレゼンテーションの機会ととらえ、社員に担当させている。これにより、社員自ら勉強する姿勢が生まれる。
大島工場長(左)と若手社員

大島工場長(左)と若手社員→


 また、特徴的な取り組みに環境整備活動があげられる。ISOの取得に向け、5S活動を行っていた時に、知人から仕事をすぐに始められる環境をつくるための活動として環境整備活動を紹介された。実際に活動をしている企業を全社員で見学。作業のしやすい環境を作り上げる活動は目に見え、分かりやすい活動ではあるが、当時は社員に製造工程でのスピード向上を求めていたため、工場の稼動時間を短くする環境整備活動には否定的な意見を持つ社員もいた。「環境整備活動を当社の文化にしたい」という俊夫社長の強い意志により導入を決定。毎朝8時から25分間、社長を含め全社員が各自の持ち場を清掃してから業務に入る。実際に取り組むと、「環境整備活動中の雑談を通じ社員間でコミュニケーションが図れること、社員ひとりひとりが日ごろから整理整頓を意識するようになり、結果として生産性向上につながった」と常務の敦之氏。
 同社の後継者は俊夫社長の子息、敦之常務。俊夫社長は事業承継を10年前から検討しており、平成26年3月に、敦之常務に経営を引き継ぐ予定で準備を進めている。敦之常務も俊夫社長同様、社員とその家族が幸せになることを最優先したいとの考えだ。受注獲得のため、さらに付加価値をさらに高めた製品の開発、将来的には海外企業に当社の製品を採用したいといわれるような製品の開発など、敦之常務はさらなる飛躍に向け構想を練っている。厳しい経営環境の中で60年以上も事業を継続してきた同社が新社長のもと、どのような活躍をするのか、今後の動向に注目したい。