株式会社 城南キー登録番号:0010

安居良二 社長

 今回のピックアップ企業は地道な分野ながらオンリーワンを目指すキー溝・スロッター加工を手掛ける株式会社城南キーをご紹介する。
 キーというと扉や金庫のカギを連想する方も多いかもしれないが、機械でのキーとは回転する軸から歯車などに動力を伝える部品を意味する。軸と回転する部品に溝を掘り、そこにキー材を差し込むことで動力を伝達するもので、同社はこのキー溝・スロッター加工に特化する事業を展開してきた。

←【技術的には高精度を、取引先との関係ではコミュニケーションを尊重する安居良二社長】

 この加工に特化する企業は全国でも少ない。特に長い溝を精密に掘削できる技術は国内でも唯一といってもよい。この技術を確立した背景には現在の社長、安居良二氏の決断がある。昭和57年に父親の経営する同社に入社した良二氏は、従来の工作機械では精度的に問題があることに不満を感じていた。そこで長い溝を正確に加工できる工作機械を探したところ、スイスのエルマス社がこうした機械を製造していることがわかり、導入を検討した。国内で前例もなく、同業者に相談してもよい評価が聞かれなかったため逡巡したが、最終的に導入を決断した。当初はエルマス社が公表するような精度が出ず試行錯誤の連続だったが、良二氏はエルマス社とのディスカッションや独自の工夫で克服し、満足できる精度を確保できるようになった。さらにはこのエルマス社製スロッティングマシンの長所と自社で作り上げた操作性のよいプログラムを組み込んだ独自の専用機を開発することに成功した。
 このように飽くことなく精度を追求した結果として顧客の信頼を獲得し、現在1,000社以上との取引がある。業種も金属加工、機械、自動車、食品、医療機器など多岐にわたっている。同社の取引上の特色として、たとえ小ロットでも断らないという姿勢がある。顧客から依頼があった場合はたとえ発注個数が一つでも断らない。
 また顧客の立場を考えてひたすら精度を追求するのではなく、高い精度が要求されない受注内容に関しては、コストを優先して精度を下げた提案を行う。このように顧客の信頼を勝ち取るため、前社長が定めた「精密加工、納期の順守、応対は親切に」という3つの社訓が受け継がれている。高度な精密さを求められる製造業である一方、商品納入ではより早くを尊重し、技術的自己満足だけの職人気質に陥ることなく、常に顧客とのコミュニケーションを保ち、取引先が求めていることに常に耳を傾けることにより、あらゆる側面で満足を与えられる事業を目指している。この結果として1日当たり30名以上顧客の来訪がある。目的は商品の受け取りもあるが、技術的な相談が多く、社訓を順守して丁寧な応対を怠らない。
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                【高い精度で長い難削材を加工できるスイス・エルマス社製スロッター】→

 また、町工場の一般的なイメージとして内部が見えづらいという印象があることから、開かれた工場の実現を目指している。そのため、来訪者が入りやすい環境となるよう、正面はガラス張りで商店のように内部が見えやすい建物となっている。その一方手形の受取はせず、現金取引に徹する健全経営にも心がけている。全国的にも同業者は少数となってしまったキー溝・スロッター加工業者だが、競争相手の少ない分野であることに油断せず、良二社長以下社員の方々の努力は日々続いている。