小松ばね工業 株式会社登録番号:0039

 「あなたは「ばね」を知っていますか」と問いかけられれば、誰もが「知っている」と答えるだろう。実際、ばねはポピュラーな機械要素であり、知らない人の方が少ないだろう。しかし、ばねの重要さ、その隠れた働き者ぶりは果たしてどこまで知られているだろうか。

←【トーションスプリング(コイルの中心軸にねじり荷重を受けるばね。最前列に精密ばねが並んでいる】

 今回紹介する小松ばね工業株式会社は、ばねの専門メーカーである。電子機器・自動車部品・時計・カメラ・医療機器・宝飾品、とさまざまな精密機器部品メーカーに製品を納めている。昭和16年の創業以来、14万種類、年間3千種・約12億個のばねを生産している。単に生産数が多いというだけではない。徹底した品質管理体制が高く評価され、無検査で納品する取引先もある。しかも、同社が得意とするのは、「精密ばね」だ。そのサイズは線径(材料の太さ)が100分の1ミリ単位。肉眼では見えないぐらいのものだ。なぜこんなに小さなばねが必要なのか。

 答えは、私たちの身の回りにたくさんあるさまざまな製品そのものが小型化していることだ。例えば、毎日のように使用する携帯電話。もはや生活に自然と溶け込んだこのハイテク機器にもばねは欠かせない。例えば開閉のときにカチッカチッと音がする「ヒンジ」という部分にもばねが使われている。毎日何度も開閉する動作を繰り返す。これは、精密でなおかつ丈夫なばねがあってこそ実現できることだ。しかもばねは内部に隠れて働いている。製品が壊れた時に初めてばねの存在を確認できる。あなたはこんな「ばね」の働きぶりを知っていましたか。しかもばねには、組み込まれる製品ごとに条件が異なるため、「どんな製品にも使用できるばね」というものは存在しないのだ。
 「『試作品のばね』を『量産品』に飛躍させると同時に取引先様からも認めていただくには、本当に大変なエネルギーが必要です。」同社の小松節子社長は言う。製品ごとに異なるばね。そのばねがひとつの形となるまでの道のりは、実は平坦なものではない。
0039_pickup_02.jpg 「ばね専業メーカーとしての長い経験がありますから、いろいろな製造方法の工夫を行ってきましたが、一人だけで考えていては限界があります。さまざまな視点を取り入れるために、難しい課題は全社を挙げて考えるようにしています。」 

 【ばねの製造機械】→

 目に見えないほどの小さなばね1個といえども、その1個が不完全では製品は動かない、ゆるがせにできない重要な1個。こんな理念を基盤にしつつ、アイデアや技術を持ち寄ってひとつの新しい形を作りあげる。しかもクオリティの高さは折り紙つき。これは、「大田区」という地域が誇るネットワーク技術の原点ではないだろか。そう、小松ばね工業株式会社には、「大田ブランド」の原点が今も根づいているのだ。
 「大田区とは単に工場が多いというだけでなく、優れた技術が集まっている。そう認識している人が多いのではないでしょうか。まさにその通りで、ただのネームバリューではなく、実が伴っています。大田区に工場がある、ということ自体に意味があるのです」もちろん、同社はその優れた技術の生きた見本だ。
 「ハイテクばかりでなく、さまざまな分野で精密ばねは必要です。羽田空港の国際化によって、大田区は海外との取引でも有利になりました。日本の製造業の先端を走っているこの大田区を基地にして、私たちの技術が必要とされる新たなばねづくりにチャレンジしていきます。」 小松社長はそう力強く語った。
 私たちの目の届かないところで活躍し続けてきた「ばね」。揺るぎない「大田ブランド」である小松ばね工業は、これからもそんな働き者の「ばね」を世界に送り出していくだろう。