トキワ精機 株式会社登録番号:0036

木村 洋一 社長

 今回のピックアップ企業は、油圧用配管継手の製造を主業とし、独自開発の特許製品「まるみ君」を開発・製品化し大田区内外でも有名な、トキワ精機株式会社 代表取締役社長の木村 洋一さんにお話を伺った。

←【木村 洋一 社長】

 同社は木村社長の祖父が木村製作所として昭和7年に創業。41年に高圧用油圧継手を開発・製造して以来、この分野に特化されて成長してきた。平成9年、木村社長が代取に就任した当時はバブル経済崩壊後の不況下で、景気低迷による需要の減少、アジアをはじめとする新興諸国の台頭で部品調達における価格競争等、中小製造業を取り巻く経営環境は厳しさを増していた。
 
 そのような状況下、木村社長と同社が取り組んだのが新製品・新技術の開発であった。木村社長の夢でもあったその製品は、材料となる短い厚肉管をゆがみなく90度曲げる「極小曲げ技術」という高度な技術を要し、なおかつ穴あけ加工が不要な油圧用配管継手である。コストの削減、納期の短縮及び材料の無駄を減らし環境対策にも繋がるという夢のようなこの製品。同社の独創的な技術と、仲間内の大田区企業の協力を得て製品開発に取り組み、3年の歳月をかけ完成した製品が「まるみ君」である。「まるみ君」は多くの大手建機メーカーに評価されると共に受注増に繋がり、木村社長と同社は厳しい時期を乗り切った。

 平成19年には、顧客からの旺盛な需要に応えるため茨城県に工場を新設。順調に成長を続けていた同社だが、20年のリーマンショック以降、厳しい事業展開を強いられる。この厳しい状況を打破したのが、またしても「まるみ君」である。昨年以降、「まるみ君」の厚肉管の径を拡大する等の改良製品を製品化し、同社の業況は回復傾向にある。現在、大手製造業は日増しに新興諸国での海外生産・調達を進めている。同社の主力取引先である大手建機メーカーも同様で、「安価な海外製品に対抗し顧客の厳しい要請に応えていくには、付加価値の高い製品を作り出し顧客満足度を高めていく事が重要」と木村社長は言う。また、「まるみ君」の開発・製品化は、木村社長のモノづくりに対する考えを大きく変えたのである。0036_pickup_02.jpg 「まるみ君」の製法は切子がほとんど出ず、材料に無駄がない。深刻化する地球環境問題の最中、環境負荷低減を実践している理想的な製品である。

【写真の左側が径を拡大した「まるみ君」】→

 日々"モノ"を作り出す側の企業としては一見矛盾するのかもしれないが、木村社長は環境負荷低減を意識したモノづくりの実践を真剣に考えられているのである。同社での環境問題への取組みはもとより、木村社長は本業とは別に、モノづくりを絡めた環境問題への取組みに積極的な姿勢を示されている。昨年は、環境省等が主催するeco japan cupの中小企業・ベンチャービジネス部門にエントリーされ、惜しくも受賞には至らなかったものの、環境問題の取組みについて審査員を唸らすような提言をされている。2、3例を挙げると、「ごみ箱のないファーストフード店」、「グリーンコンビニエンスストア」の設置、「エコタウン・エコストリート」の形成等、お話を聞くと決して思い付きのアイデアなどではないことが伺える。
 
 モノづくり企業がいかに環境問題の取組みに向き合うか? 一助を担うことができるか? また、環境問題をモノづくり企業の新たなビジネスチャンスとして捉えられている。ごみの低減、二酸化炭素の排出を減少させるだけではなく、モノづくり企業には環境問題に貢献できる企画力や技術力を有している。木村社長はこれらの取組を大田区でまた、「まるみ君」の開発時と同様に、大田区企業の仲間達と実現したいと考えている。「目的が定まり大田区企業の知恵と技術力を結集させれば出来ないモノなんてないよ」と笑って言われる木村社長。

 現状、中小製造業を取り巻く経営環境は非常に厳しく、グローバル化が問われる時代になった。しかし、大手企業と比較して資産・体力の劣る中小製造業の中で、グローバル化を推し進めることができる企業は一握りであり、また、行き過ぎた製造業の海外移転は工業立国である日本経済の根底を覆す可能性を秘めている。世界に名だたる工業集積のまち大田区のモノづくり企業として地元に根を下ろし、小さなコミュニティながらも環境問題の他、様々な問題に取組み、新たなビジネスチャンスや需要を創造し生み出していきたいという木村社長のお話しに感服した。木村社長の考える取組みを是非、「大田ブランド」登録企業で実践してみてはいかがだろうか?