株式会社 上島熱処理工業所登録番号:0071

難易度の高い大型製品の塩浴熱処理作業

今回のピックアップ企業は、創業以来、「お客様の製造ラインの一部門たれ」をモットーに、鋼に魂を入れ続ける株式会社上島熱処理工業所 代表取締役 上島 秀美さんにお話を伺った。

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同社は昭和31年に上島氏の父が有限会社組織として創業し、昭和33年に株式会社組織となった。熱処理一筋50年以上の実績を積み、その技術を生かし、バリエーションに富んださまざまな製品の熱処理を行っている。一般的な熱処理には、『焼入れ』と『焼戻し』という作業がある。『焼入れ』は鋼を加熱後急冷し、『焼戻し』は焼入れ後、改めて低温で加熱する。通常、焼入れ温度が800℃位に対し、同社は1200℃前後の高温で加熱を要する特殊な処理が得意とのこと。大型製品になると冷却ムラが発生しやすいが、温度管理のノウハウにより高精度の均一冷却を行い、熱処理する前の数倍の寿命を実現できるという。「見た目ではわかりませんからね」と社長は言うが、図面上に同社で熱処理をするように指定してある大手からの製品がいくつもあるという。
実は同社には、営業担当者が一人もいない。しかし、「いいただいた仕事は断らない。」という精神のもとに続く長年の実績と高い技術力が口コミで広まり、週に約1,000件の注文依頼がある。
「50人規模の企業で、現代の名工3名を筆頭に、東京マイスター3名、金属熱処理特級技能士8名などこれだけの技能者がいるところはないでしょう。」と社長は胸を張る。この職人といわれる技能者集団が、預かった製品を自社製品と考え、作業工程の改善提案を積極的に行い、ときには発注企業より製品に熟知し、指定の間違いを指摘したこともあるという。同社の品質に対する信頼性の高さを示すエピソードを挙げたらキリがない。pickup_0105_02.jpg

【ナドキャップへ対応する新型真空炉】→

「お客様の熱処理工場として、お客様が自慢したくなるような性能と品質を提供する。」という品質方針を維持するための環境づくりに取り組む同社の真摯な姿勢には目を見張るものがある。日本で最初にJIS焼入焼戻しの認定を取得し、ISO9001とISO14001の認証も熱処理メーカーとしては、1,2番目に取得している。さらには、航空宇宙技術集合体「アマテラス(AMATERAS)」の一員となり、航空宇宙産業界に求められている認証制度ナドキャップ(Nadcap=国際特殊工程相互認証制度)の取得準備やBCP (business continuity plan=事業継続計画)の策定準備もしているという。もちろん製品管理もシステム化を行っている。数千点に及ぶ製品の管理負担の軽減に努め、年内には作業工程の管理もシステム上で行っていく予定である。
「この技能をどうやって次世代に繋ぐかが重要です。」との社長の言葉からもわかるように、技能継承・人材育成に関することにも余念はない。現在の陣容は20から60歳代と幅広く、社内では技能士検定を受験するということは当然という意識が浸透している。また、忘れてならないのは社長のアンテナの高さであろう。社長は、「表彰制度や認定制度などに取り組み関わることで、色々な方や業界団体とのお付き合いをし、有益な情報をいただいています。」という。例えば、同社の信頼性高さ、取り組む姿勢に共感した大企業担当者から、個人的に同社の社員として職員を出向・転籍させる話があり、今では同社の中心的な存在となって活躍する技術者が何人もいるとのこと。

「大田区のネットワークには助けられてきましたので、何か貢献できればと思い大田ブランドに登録しました。」と社長は謙遜するが、株式会社上島熱処理工業所は、大田ブランドの掲げる「Only Ota Quality」を実践している企業の1社であることは間違いない。今後、益々の活躍が期待される企業である。